進化し続けるエネルギー分野を支える半導体技術革新の 3 つのポイント

着実な半導体技術の進歩が、再生可能エネルギーの未来の実現に貢献します 

4 6 月 2025 | テクノロジーと革新

マーケティング担当上級副社長の Keith Ogboenyiya が本ブログを執筆しました。本記事は、Distributech 2025での基調講演をもとに構成されています。

エネルギー分野は、かつてないほど急速かつ歴史的な変革のただ中にあります。2030 年までに、世界の再生可能エネルギーによる発電量は 1 万 7,000 テラワット時を超えると予測されています。これは、2023 年と比べて約 90% の増加となります。再生可能エネルギーは、もはや遠い未来の話ではなく、すでに現実となり、いま急速に拡大しています。再生可能エネルギーは拡大し、電化は加速し、自動化も進展しています。こうした進化を支える半導体技術の重要性は一層高まっています。

TI では、私たちの生活に欠かせない製品の基盤となる半導体を通じて、エレクトロニクスをより手頃で身近なものにすることに注力しています。また、同じ情熱を、再生可能エネルギーの普及にも向けています。たとえば、家庭の明かりを灯す太陽光パネルから、通勤前に車を充電する壁掛け型の EV チャージャに至るまで、再生可能エネルギーの普及の実現を支えています。

エネルギーエコシステム全体において、TI は再生可能エネルギーの未来を支えるために、信頼性、安全性、拡張性に優れた半導体技術を提供し、太陽光発電エネルギー貯蔵、エッジベースの自動化という三つの主要分野でアクセスの拡大と支援を進めています。

1.  よりスマートに、より小型で、さらに身近になった太陽光発電

太陽光エネルギーの普及が進む中で、課題は単なる発電にとどまらず、効率性、柔軟性、経済性の向上へと移行しています。こうした期待に応えるには、性能を損なうことなく、より小型で高精度、かつ設置が容易なソーラー インバータが必要とされます。

電力管理用集積回路 や DC/DC コンバータ は、太陽光パネルで得られたエネルギーを調整し、最適化する役割を担っています。アナログ センサや組込みプロセッサは、太陽光エネルギーをスマート グリッドに統合するのに役立ち、リアルタイムの監視や需要への即応性を可能にします。

TI の半導体、特に 窒化ガリウム (GaN) などのワイドバンドギャップ材料を用いた製品は、太陽光発電をより身近でコスト効率の高いものにするうえで大きく貢献しています。より高速なスイッチングと高い電力密度を可能にすることで、TI の GaN ベースの FET は、より小型で高効率なソーラ インバータの設計を支援し、エネルギー損失の低減やシステム全体の省スペース化に貢献します。 

屋上パネルからインバータ、蓄電池、電気自動車の充電に至るまで、こうした技術革新は、再生可能エネルギーやエネルギー効率への移行を支える、よりスマートで拡張性の高いソリューションを設計者が実現するための助けとなっています。

2.学習し、適応し、保護するエネルギー貯蔵システム

信頼性の高いエネルギー供給を支える重要な要素であるエネルギー貯蔵も、急速に進化しています。

再生可能エネルギーの発電が拡大し、電化による需要が増大する中、エネルギー貯蔵は分散型グリッドでの需給バランスの調整や、消費者のエネルギー コスト削減に不可欠な存在となっています。これらの貯蔵システムが効果的に機能するためには、変化する状況をリアルタイムで監視、管理、対応できることが必要です。そして、これを可能にしているのが半導体技術です。

アナログ半導体は、電流や電圧、温度、光、音といった実世界の信号を制御、管理する上で不可欠な役割を果たしています。アナログ半導体は、電力の制御や伝達、モータの駆動を支え、効率的なエネルギーシステムの実現において欠かせない存在です。

たとえばバッテリ管理システムでは、各セルの電圧、温度、電流を監視するために、高精度なアナログ部品が欠かせません。こうした高精度な測定により、熱暴走の防止、バッテリー寿命の延長、そして住宅用から大規模ユーティリティ向けまで、貯蔵システムの安全な運用を支えるために必要なデータが提供されます。

3. エネルギー グリッドの末端におけるインテリジェンス

組込みプロセッサ用の半導体は、電子システムにおける重要な構成要素であり、グリッド システムの高度な知能化と接続性の向上に大きく貢献しています。

グリッドの末端、つまり屋上ソーラーパネルでエネルギーが発電され、バッテリに蓄えられ、電気自動車などの機器で消費される分散型のポイントでの技術革新は、エネルギーの管理と保護のあり方を大きく変えつつあります。今日のような変化の激しい環境では、意思決定をクラウドに委ねて待つ余裕はありません。需要の急増や電圧低下、天候による障害が発生した場合でも、対応は現場で迅速に行われなければなりません。だからこそ、 エッジ人工知能 (AI) は、現代のエネルギー インフラにおける基盤技術となりつつあります。

グリッドの末端にある機器に AI 対応のプロセッサを組み込むことで、TI の技術は組み込みシステムの頭脳として機能し、リモート サーバに依存することなく、データ分析や異常検知、リアルタイム対応が可能なシステムの構築をエンジニアが実現できるよう支援しています。これにより、変圧器からスマート メータに至るまで、障害の早期検出や負荷分散の最適化、システムの自律性向上が実現します。こうした機能は、大規模なデータ駆動型エネルギー管理を支える上で不可欠です。

エッジにおけるインテリジェンスは、グリッドのレジリエンスを高めるうえでも極めて重要な役割を果たします。分散型グリッド モデルにおいては、電力が何千ものノードで生成、蓄電、消費されます。このようなシステムを円滑に機能させるには、各ノードが自律的かつ柔軟に対応できることが求められます。TI の組込みプロセッサとアナログ フロントエンドは、電圧検知、負荷分散、自動制御をサポートし、ハードウェアレベルでの即応性を実現します。これにより、エネルギー システムは状況の変化に柔軟に対応できるようになります。

組込みプロセッサや接続ソリューションは、各家庭のスマート メータからエネルギー使用量に関する正確なデータを収集する目的でグリッド運用者を支援しています。これにより、より賢いエネルギー利用が実現し、顧客がグリッドに余裕のある時間帯に需要を移すことへの意識向上にもつながります。

半導体はエネルギー エコシステムを一つに結びつけます。アナログ技術と組込み技術の両面から、TI は太陽光パネルやエネルギー貯蔵システムといったアプリケーションを支える半導体を提供しています。 同時に、これらの技術は再生可能エネルギーの安全性、信頼性、経済性、性能に対する消費者の信頼を高め、その普及を今も将来も後押ししています。 

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